先に結論: 防諜は、相手の諜報活動を防ぐ側の呼び方です。秘密が漏れないように守る、相手の情報活動を見つける・妨げる、という向きです。諜報は、情報を集めて分析する側の呼び方です。取る側と守る側、です。いまの日本の政府文書では、取る側に近い公式の言い方は重要情報活動、守る側に近い公式の言い方は外国情報活動への対処です。法律上の職名として「防諜官」が固定されているわけではありません。
入口になったのは、TBS系日曜劇場『VIVANT』です。第17話のあと、工作や潜入と一緒に、守る側の言葉も調べられています。公式の番組紹介は「潜入捜査」「非情な決断」と書いています。ここではあらすじや今後の展開ではなく、防諜と諜報の切り分けだけを整理します。
この記事で分かること
- 防諜の読みと意味
- 諜報との違い
- 政府が使う「重要情報活動」と「外国情報活動への対処」
- 平成19年のカウンターインテリジェンスとの関係
- ドラマの「守る/取る」と、公式の言い方の距離
防諜とは
読みは「ぼうちょう」です。防ぐ側の諜報、と覚えると近いです。相手が秘密を取りに来るのを防ぎ、漏えいを避ける活動、という使い方です。
内閣官房は、平成19年8月9日の「カウンターインテリジェンス機能の強化に関する基本方針」の概要で、同じ向き合い方をカウンターインテリジェンスと呼び、目的を「国の重要な情報や職員等の保護を図ること」と書いています。情報管理の徹底、秘密保全、行政機関へのサイバー攻撃への備え、も並んでいます。
諜報とは
諜報は、情報を集めて分析する側です。ニュースでは「情報を取る」「相手の内側を知る」という響きで出ます。工作員やスパイの記事で書いたとおり、法律上の正式な職名ではありません。
令和8年7月31日に施行された国家情報会議設置法は、取る側に近い活動を重要情報活動と定義しています。安全保障の確保、テロリズムの発生の防止、緊急の事態への対処など、重要な国政の運営に資する情報の収集調査、です。内閣官房の案内も、同じ切り分けで書いています。
公式の言い方(令和8年)
守る側に近い公式の言い方は、外国情報活動への対処です。内閣官房は、外国の利益を図る目的で、日本の政府や企業などの重大な秘密を取得する活動への対処、と案内しています。偽情報の拡散などの影響工作への対処も、ここに含まれます。
国家情報会議は、この二つの重要事項を調査審議する閣僚級の会議です。議長は内閣総理大臣です。議員には内閣官房長官、国家公安委員会委員長、法務大臣、外務大臣、防衛大臣などが入ります。一つの官庁だけの仕事、とは書いていません。
事務局は、内閣官房の国家情報局です。同法の施行で、内閣情報官と内閣情報調査室は発展的に解消され、国家情報局に改組されました。国家情報局は、自ら情報の収集調査に当たるとともに、関係行政機関の情報を集約した総合分析を行う、と内閣官房は書いています。取る側の仕事と、守る側の企画・総合調整は、同じ機関の中でも分かれます。
カウンターインテリジェンス
平成19年の政府文書では、守る側をカウンターインテリジェンスと呼んでいます。内閣にはカウンターインテリジェンス推進会議があり、関係行政機関の連携を確保し、強化に向けた施策を進める、と内閣官房は書いています。基本方針の概要は、平成20年4月1日から内閣情報調査室にカウンターインテリジェンス・センターを置く、とも書いています。
いまの法律の本文は、カウンターインテリジェンスという語ではなく、外国情報活動への対処を使います。日常語の防諜は、どちらにも近いです。ドラマの「防諜部」という看板が、推進会議や国家情報局そのものだとは限りません。
違いを一言で
| 言葉 | 向き | 公式で言えること | 言えないこと |
|---|---|---|---|
| 防諜 | 守る | 相手の諜報を防ぎ、秘密の漏えいを避ける、という使い方。読みはぼうちょう | 法律に「防諜」という職名がある、という意味 |
| 諜報 | 取る | 情報の収集・分析の呼び方。ニュースや解説でよく出る | スパイの別名だと決まった、という意味 |
| 重要情報活動 | 取る(政府の呼び方) | 国家情報会議設置法2条は、重要な国政の運営に資する情報の収集調査、と書く | ドラマの情報部と同じ組織だ、という意味 |
| 外国情報活動への対処 | 守る(政府の呼び方) | 同法2条と内閣官房の案内は、外国の利益のための秘密取得への対処、と書く。影響工作も含む | ドラマの防諜部と同じ部署名だ、という意味 |
| カウンターインテリジェンス | 守る(平成19年の呼び方) | 基本方針の概要は、重要な情報と職員等の保護を目的と書く | 令和8年の法律本文の用語そのもの、という意味 |
工作員・潜入との関係
取る側の呼び方は、工作員・スパイ・エージェントに分かれます。守る側が、相手の工作を見つける仕事を防諜と呼ぶことがあります。潜入はやり方、公安は組織の呼び方です。別記事にまとめています。
→ 工作員とスパイの違いは?
→ 潜入捜査とは?公安との違い
→ ダブルエージェントとは?意味とリエゾンとの違い
→ 規律と命令の違いは?
ドラマとの距離
フィクションでは、一人が取る側にも守る側にもなり、部署名が防諜部・情報部・公安とすぐ入れ替わります。現実の政府は、取る側を重要情報活動、守る側を外国情報活動への対処と書き、閣僚級の会議で方針を審議する、と公開しています。番組の部署名を、国家情報局や警察庁の官職名だと思い込まない方が正確です。
よくある誤解
- 「防諜と諜報は同じ」 … 守る側と取る側です。向きが違います。
- 「カウンターインテリジェンスは日本語にない」 … 平成19年の政府文書では、この英語を使っています。いまの法律本文は、外国情報活動への対処です。防諜が近い日常語です。
- 「防諜=特定秘密保護法そのもの」 … 秘密を守る話は重なります。法律の名前と、活動の呼び方は別です。
- 「内閣情報調査室がいまもある」 … 令和8年7月31日の施行で、国家情報局に改組されています。
- 「ドラマの防諜部が実在の部署名」 … 公式が公開しているのは、国家情報会議と国家情報局です。番組の看板と同じとは限りません。
よくある質問
Q. 読み方は?
A. 「ぼうちょう」です。諜報は「ちょうほう」です。
Q. 防諜は警察の仕事ですか?
A. 国家情報会議の議員には、国家公安委員会委員長も入ります。事務局は国家情報局です。一つの官庁だけの仕事、とは書いていません。
Q. 英語は何ですか?
A. 平成19年の政府文書はカウンターインテリジェンスと書いています。辞書では counterintelligence と対応することが多いです。いまの法律本文は、外国情報活動への対処です。
確認するなら
- 取る側と守る側の公式の切り分けは、内閣官房の国家情報会議のページで確認する
- 条文の定義は、e-Govの国家情報会議設置法2条で確認する
- 平成19年の呼び方は、カウンターインテリジェンスの基本方針の概要で確認する
- 取る側の呼び方は、工作員・スパイの記事と切り分ける
- 国家情報会議・国家情報局(内閣官房): https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/nic_nib.html
- 国家情報会議設置法(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/508AC0000000028
- カウンターインテリジェンス推進会議(内閣官房): https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/counterintelligence/
- カウンターインテリジェンス機能の強化に関する基本方針(概要): https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/counterintelligence/pdf/basic_decision_summary.pdf
まとめ
防諜は守る側、諜報は取る側です。いまの日本の政府文書では、取る側を重要情報活動、守る側を外国情報活動への対処と呼びます。平成19年の文書では、守る側をカウンターインテリジェンスとも書いています。ドラマで「防諜」と聞こえても、実在の一つの部署名だとは限りません。
※一般的な用語の解説です。個別の組織や個人についての断定ではありません。番組のあらすじや今後の展開は扱いません。最新の公式案内は内閣官房とe-Govで確認してください。
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